研究内容
1.癌起源細胞と周囲微小環境の研究
我々のグループでは20種類以上の遺伝子改変マウスを組み合わせることによって、多くの消化器癌モデルを樹立しています。また、近年同定された消化管幹細胞を選択的に標識するマウスを用いて、癌細胞の起源とその特性についての研究を開始しています。幹細胞や発癌の制御には、周囲の微小環境の存在が極めて重要です。癌組織内の免疫細胞や線維芽細胞、血管内皮細胞や神経細胞に至るまで、多くの細胞群の役割を網羅的に解析しています。また、ヒト及びマウス消化管幹細胞の三次元オルガノイド培養法を用いて、in vitroで分化・発癌のメカニズムを検討しています。これらの多彩なマウスモデルとin vitroオルガノイドを用い、消化器癌の新規治療法の確立をめざしています。
2.消化管内細菌叢が関連する病態の解明とその制御法の開発
近年腸内細菌叢の研究が進み、ヒトの共生体としての役割が認識されるようになってきました。一方で細菌叢の破綻によって栄養の代謝や免疫反応に変化が生じ、メタボリックシンドロームや炎症性腸疾患の原因となることも知られてきました。炎症性腸疾患は比較的若年者に発症することが多く、原因として遺伝因子、環境食事因子、腸内細菌などの関与が考えられていますが、未だ大部分は未解明です。また、最近では口腔内や胃内細菌叢が消化管内の病気に関わっていることが報告されています。我々は、遺伝的要因を背景とした宿主の免疫や防御機構の破綻と、消化管内細菌の相互反応が原因になるとの仮説にもとづいて研究を行い、消化管内細菌叢の網羅的解析を含めた検討によって、病態解明と有効な治療法の開発を目指しています。また、東大消化器内科の豊富な臨床データを用い、臨床研究としてヒト消化管内細菌叢を分析し、慢性炎症・発癌などに関連する変化を解析中です。